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速くなるために、遅く走る

夏のZ2ジョグで感じる不安から、成果の見えない練習を続けることと、成長を評価する時間軸について考える。

昨年の秋から約1年、毎月100km程度走っている。

暑くなってきたので、大部分のランを心拍数を低い範囲に保つZ2ジョグのペースを落としている。

これまではキロ5〜6分で走ることが多かった。 それより明らかに遅い数字がスマートウォッチに表示されると、意図的に落としていると分かっていても、少し不安になる。

こんなに遅く走って、本当に速くなるのだろうか。

速く走る練習なら、全身の疲労とともに「トレーニングしている感」が味わえる。 一方、ゆっくり走ったあとに確認できるのは、単にゆっくり走ったという事実だけだ。

見えやすい数字と見えにくい変化

以前、「ランラジ」というポッドキャストで、成長は薄い紙を一枚ずつ重ねるようなものだという話を聞いた。

陸上競技部、藤田監督のね ちょっとショート動画があるんで、インスタグラムぜひボディメンテ見てほしいんですけど、こんな言葉を言ってたんですよ。長距離競技では強度の差はあれど、似た練習を毎日繰り返していきます。薄い紙を1枚1枚 重ねていくような作業になるので、根気もいりますし、何より重ね続ける状態を作ることが大事。

https://listen.style/p/vwhlxyex/giqubeza?t=842.36 "薄い紙を1枚1枚重ねていくような作業になるので根気もいりますし何より重ね続ける状態を作ることが大事。コンディショニングがうまくいっているチームというのは着実に積み上げて気づいたときには束になって"206㎞:カラダからのサイン。。 - ランラジ 〜 Running Radio LISTEN

紙を一枚置いても、ほとんど高さは変わらない。 何枚か重ねても、積み上がった実感はない。 それでも長く重ねていけば、いつか目に見える厚みになる。

今の私にとって、毎回のZ2ジョグはこの薄い紙だ。

一度走っただけでは速くならない。 数週間続けても、変化を感じられるとは限らない。

その日のペースや距離はすぐ数字になるが、その練習によって身体がどう変わったかは、その場では確認できない。 見えやすい数字と育てたい能力は、同じ速さでは変化しない。

夏は、このずれをさらに大きくする。 気温と湿度が上がってから、同じペースでも心拍数が高くなる日が増えた。 時計に表示されたペースだけを比べると遅くなったように見えても、身体が受けている負荷が小さくなったわけではない。

外側から見える速さではなく、体の内側の負荷に合わせて走る。 Z2ジョグでは、その認識の切り替えが必要になる。

厚い紙を置きたくなる

積み上がっている実感がないと、焦って厚い紙を置きたくなる。

少しペースを上げる。 距離を伸ばす。 予定になかった強い練習を加える。

そのほうが、今日は頑張ったと思いやすい。

負荷は、置いた分だけそのまま厚みになるわけではない。 強すぎる負荷で怪我をすれば、積み重ねそのものが止まる。

練習は、走っている時間だけでは完結しない。 その負荷から回復し、次の練習を受け入れられるところまでを含んでいる。

一回の練習を厚くすることより、次の一枚を置ける状態を残す。 遅く走るのは、頑張らないためではなく、積み重ねを途中で切らないための戦略なのだ。

評価する時間軸

とはいえ、「信じて続ければよい」で終えるのも違うと思う。

方法が合っていない可能性はある。 しばらく続けても変化がなければ、練習の内容を見直す必要がある。

ただ、一回ごとのペースを見て、数か月かけて起きる変化を判断するのも無理がある。 成果が現れるまでに時間がかかるなら、評価の時間軸を合わせなければならない。

今日の数字だけで結論を出さない。 一定の期間を置いて、同じくらいの心拍数でどの程度走れるようになったか、疲労がどう残るかを振り返る。

信じるというより、すぐには答えの出ない仮説を、検証できる時まで持ち続ける。

今の私がすべきことは、今日速く走れると証明することではない。 この夏は、時計に表示される遅い数字を見ながら、薄い紙を一枚ずつ置いていく。 厚みを確かめるのは、秋がきてからでよい。

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